トウモロコシの品種・土作り・植えつけ・肥料・収穫・病気・害虫対策を実写真でわかりやすく解説!
基本情報
トウモロコシの一種のスイートコーンは、野菜としてはでんぷん質・糖質が多く、高カロリーで、甘くておいしいことから、子供の好きな野菜の上位。
食物繊維が多く、胚芽にはビタミンB1、B2、Eが豊富に含まれており、栄養的にも優れた野菜。
実の粒ぞろいをよくするには、10株以上を複数列に配置し、お互いの株の花粉が雌穂にかかるようにする。
粒色が違う品種が近くにあると、粒色が本来のものと違ってくること(キセニア)があるので、粒色をそろえたい場合、混植は避ける。
特に、ポップコーン種との混植は味も悪くなる。
鮮度が落ちやすいので、もぎたての実をその日のうちに食べるのが一番。(家庭菜園だからできる!)
科目 | 好pH | 連作障害 | 発芽適温 | 生育適温 | 発芽日数 | 発芽光性 | 日照 |
イネ科 | 6.0~7.2 | 1年位 | 25~30℃ | 20~30℃ | 8~10日 | なし | 陽性 |
栽培のポイント
- 受粉率を高めるために、同じ株数でも1列より2列に並べて植える
- アワノメイガの被害を抑えるために、授粉に必要な分を残して雄穂は早めに切り取る
コンパニオンプランツ
一緒に栽培することで互いに良い影響を与え合う植物の組み合わせをコンパニオンプランツという。
エダマメ(ダイズ)・アズキ
エダマメやアズキの根には根粒菌が共生し、空気中の窒素を取り込み土を肥沃にする。
とうもろこしの発達したひげ根がこの肥料分を吸収しよく生長する。
やせた土地でなければ とうもろこしの追肥も必要がなくなる。
害虫は、とうもろこしにはアワノメイガ、エダマメにはカメムシ、コガネムシ、シロイチモジマダラメイガ、アズキにはフキノメイガが寄ってくる。
別種の害虫は互いを避け合う性質があるため、異なる科の野菜を混植するとそれぞれの害虫が寄り付かなくなり、野菜全体の害虫被害が減少する。
つるありインゲン
とうもろこしの株の間にインゲンの種をまくと、発芽したインゲンはとうもろこしの茎を支柱代わりに絡みついて伸びていくので空間を有効利用できる。
マメ科のインゲンもエダマメやダイズと同様、根に根粒菌が共生して空気中の窒素を固定し肥料分に変え土を肥沃にするので、とうもこしの生育が促進する。
とうもろこしは害虫アワノメイガ、インゲンにはその近縁のフキノメイガが付くが、混植することによりどちらの被害も抑えられる。
カボチャ・スイカ
カボチャやスイカはツルを横に伸ばし、栽培に広い面積が必要になり、とうもろこしは風媒花のため、株数を多めにして受粉しやすくする。
横にのびるカボチャ・スイカと、縦に伸びるとうもろこしを組み合わせることにより同じウネで空間を有効に活用できる。
とうもろこしは暑さや乾燥に強く日光を好み、カボチャやスイカは多少の日陰でもよく育ち、とうもろこしの株元を覆うよに広がるため土の保湿や雑草の発生予防など、マルチの役目を果たす。
相性が悪い野菜
- ナス(有害で生長を止める)
- トマト・ミニトマト・ピーマン・シシトウ(生長を抑制する)
栽培時期
地域や品種により異なるので参考まで。(さいたま市想定)
月 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | ||||||||||
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栽培作業 | 種まき~ | 植えつけ~ | ~種まき、~植えつけ | 収穫~ | ~収穫 |
品種
スイートコーン
ゴールデンコーン(黄粒種)
スイートコーンの中でも特に人気の高いゴールデンコーン(甘味黄色粒種)。
その名の通り、実が黄色で甘味が強い品種が多い
ゴールドラッシュ
日本生まれの大人気スイートコーン。
柔らかい皮が特徴でみずみずしく、生で食べられる。
「ゴールドラッシュ86」「ゴールドラッシュ88」「ゴールドラッシュ90」など様々に品種改良されているため日本各地で栽培されている。
サニーショコラ
強い甘みとみずみずしくジューシーな味わい。
皮が薄く口当たりがよく、フルーティーな甘さを感じる。
その味わいから「フルーツコーン」と呼ばれる。
味来(みらい)
別名「ミラクルスイートコーン」との異名を持つ、糖度の高いトウモロコシ。
その甘さと食感から、2000年頃に一躍有名に!スイートコーンブームの火付け役となった。
ヤングコーン(ベビーコーン)
とうもろこしが大人になる前に収穫されるのでヤングコーンやベビーコーンと呼ばれる。
サラダや炒め物などに使われることが多い。
ハニーバンダム
1971年、日本に初めてやってきたスイートコーンの先駆者!
主食として食べられていたとうもろこしが夏のおやつ的存在になった。
甘さは抜群ですが皮が固いという欠点がある。
この欠点を品種改良されたものがピーターコーン。
ゴールデンアロー
一般的なとうもろこしよりも大きめのサイズ感が特徴。
ただ大きいだけでなく甘く上品な味わいで、満足度の高いとうもろこし。
シルバーコーン(白粒種)
スイートコーンの一種で、名前の通り粒が白く別名ホワイトコーンとも呼ばれている。
ピュアホワイト
2002年に北海道で誕生した新生のとうもろこし。
名前の通り純白の粒で味はフルーツ並みの甘さを持ち、その食味の良さと見た目の良さ全国的に。
ロイシーコーン
ピュアホワイトを何度も品種改良してできた。甘さにとにかくこだわって作られた。
生産者が少なくあまり出回ることがない。
バイカラーコーン(バイカラー種)
ゴールデンコーンとシルバーコーンを掛けあわせた品種。
メンデルの法則通り、黄色と白が3:1の割合で現れるため、バイカラーコーンと呼ばれている。
甘々娘(かんかんむすめ)
山梨県の市川三郷町が指定産地となっており、とにかく甘い!
きみひめと同じく生産量がすくなく「幻のとうもろこし」と呼ばれている。
ピーターコーン
バイカラー系のスイートコーンとして、昭和60年に誕生し、プリプリとした粒と甘さからあっという間に人気品種に。
ワキシーコーン(糯種)
最大の特徴は「モチモチ」な食感。日本での栽培はあまり主流ではなく、ほとんどは外国産。
日本では「もちとうもろこし」として販売されており、そのもちもちを活かして、ワキシーコーンスターチなどにも加工される。
黒もちとうもろこし
粒の色が黒く、日本では北海道で主に栽培されている。
糖というよりはもち質のデンプンが多く含まれているので、もちもちしていて腹もちが良い。
白もちとうもろこし
他2種に比べて、甘みが少なく特にモチモチ感が強いのが特徴。
日本では北海道をはじめとする各地で栽培されている。
黄もちとうもろこし
昔から食べ親しまれていたのがこの黄もちとうもろこし。
ほか2種に比べて甘みがありもち感が少ないのが特徴。北海道や長野県で生産されている。
ポップコーン(爆裂種)
映画館でよく食べられるポップコーン。
ほかのとうもろこしより粒皮が固いのが特徴で、イエローポップコーンという品種名。
1粒1粒を乾燥させて粒の中の水分をなくした状態で、熱を加えることで熱と水蒸気の圧力によってでんぷん質がふくらみ、爆発してポップコーンになる。
デントコーン(馬歯種)
おやつ感覚のとうもろこしとは全く異なり、成長過程で糖分がデンプンに変わってしまうため全然甘くなく粒が硬いのが特徴。
加工して使われることが多く、お菓子作りに使用する「コーンスターチ」もデントコーンが加工されたもの。
また、牛や豚などの家畜の餌としても使われる。
フリントコーン(硬粒種)
デントコーンよりもデンプンが少ないですが、国によってはフリントコーンを主食としているところもある。
日本でもスイートコーンが流行るまでは食用としてフリントコーンを食べていた。
また、メキシコ料理のトルティーヤの生地にも使われている。
フリントコーンには、グラスジェムコーンというカラフルな粒が特徴の品種がある。
ソフトコーン
南米で主に栽培されている。
デンプンの濃度が薄く粉末にしやすいため、砕いて使用される。
ウチはこのトウモロコシ!
ゴールデンアロー(大創産業:55円×7袋)

種まき・育苗
ポット(3号:9cmサイズ)に3粒ずつ、指で1cmの深さに押し込んで種をまき、たっぷりと水をやる。(種は、発芽しやすいように、尖った方を下に向ける。)

気温が暖かくなる5月以降であれば、畑に種を直播きすることもできる。
スイートコーンは、発芽には比較的高温が必要なので、育苗には温度を確保できる場所が必要。
地温20℃で9日程度で発芽する。
発芽した株は本葉1~2枚のときに1本にし、最終的に草丈15cm程度の苗に仕上げる。
間引きは不要な苗をハサミで切り取ると、残す苗の根を傷めない。
大苗にし過ぎは禁物。
同じ畑で違う品種を育てると、それぞれの品種の花粉が受粉し合ってよい実ができないので、同じ畑では1つの品種だけ栽培する。
畑の準備
2週間以上前に苦土石灰約70g/1㎡を全面に散布して耕し、1週間前に堆肥は2~3kg、化成肥料(N:P:K=8:8:8)は150g程度を施してよく耕し畝を作る。
植えつけ
株間30cm、条間45㎝で光の当たり方と風の通りを考えて、千鳥状に2列植えにし、たっぷりと水をやる。
トウモロコシは風媒花で、雄花の花粉が風によって運ばれ、雌花について受粉するので、1列で長くするよりも、2列以上にしてまとまるように植えたほうが、うまく受粉して粒ぞろいが良くなる。
追肥・土寄せ
草丈40〜50cm、本葉5〜6枚の頃、1回目の追肥。
この頃は、雌穂が分化する直前で、ここで穂の大きさと粒の数が決まる。
株元に追肥を施し、しっかりと土寄せをする。
株の先端に雄穂が見えた頃、2回目の追肥・土寄せ。
この頃は、雌穂からヒゲ(絹糸)が出る1週間前にあたり、受粉に備えて草勢をピークに持っていく大切な時期。草丈も高くなってきているので、株元にしっかりと土寄せをする。
追肥は速効性の化成肥料を1株当たり1握り程度(約50g?3g?)を株元のまわりにばらまき、まいた肥料が隠れる程度に通路部分から土を寄せる。
分げつ枝(わき芽)は取らない
株元から出た分げつを残すことで根量と葉面積が増えて、増収と倒伏防止の効果が得られる。
人工受粉
雄穂が伸び、花粉を散らすようになると、下に生えてきている雌花が開花を始めるので、雄穂を切り取り、雌穂のヒゲ(絹糸)に擦り付けて受粉させる。
自分の雄花では受粉しにくい?らしいので、2本を1組にして多くの雌穂の上でフリフリするとよい。
水切れ
雄穂が開花してからは、水切れに注意。
この時期に水切れすると、先端まで実が入らなかったり、穂の太りが悪くなる。
雄穂のカット
雄穂が伸びてくる時期はアワノメイガの被害が多くなってくる時期でもあるので、受粉が終わったら雄穂は切り取る。
受粉が終わったら雄穂のカットとともに、害虫や鳥を寄せ付けないために、ネットをかぶせるなどを同時に行うとよい。
摘果(除房)する?しない?
トウモロコシは1株に2〜3本の雌穂ができるが、実入りのいいトウモロコシを収穫するために、1株に1つの雌穂を残して摘果することがある。
1番上の雌穂のヒゲ(絹糸)が発生した頃に、その雌穂を残して、他の(その下の)雌穂はかき取る。
尚、下の方についた雌穂は、小さいうちに摘果することで、ヤングコーンとして利用できる。
しかし、除房の際に茎葉を傷つけてしまうことが多く、除房による増収効果は薄いため、労力を減らすことでも除房は行わなくてもよいと考え方もある。
病虫害
病気はほとんど問題ない。
アワノメイガの幼虫
アワノメイガ対策で雄穂を切り取るのと、雄穂から雌穂へ幼虫が移動するのを防ぐため、雄穂の出始めた時と、その後7日間隔で殺虫剤を2~3回散布。
薬剤を使わない場合、雄穂が出た後に幼虫が茎の上部に入った場合は雄穂を切り取る。
また、雌穂に近い場所に入った場合は、穴の上3cmくらいをカッターナイフで縦に切り裂いて幼虫を取り出す。
収穫
受粉から20〜25日たつとひげの先端が固まりゴワゴワし茶色に枯れてきたら、収穫のサイン。
外皮を少しむいて上部の実の膨らみ黄変した時が適期。
ヒゲが茶色く縮れてもタワラ(実)がふっくらしていないものは、うまく受粉ができなかったもので、このまま生育させても肥大しないので収穫してしまう。
トウモロコシは冷え込んだ夜に糖度が高まるので、早朝収穫がいちばん甘い。
常温では、収穫後5~6時間で糖分が減り始め、その後どんどん甘さが減少するので、家庭菜園ではもぎたての味をすぐに楽しもう。
すぐに食べないときは、茹でて冷凍しておく。
茎付き収穫で糖度保持
3節分の茎を付けて朝収穫すると夕方まで糖度を保持することができるらしい。
立てて保管するとより糖度保持効果が高いとのこと。
トウモロコシの残渣処理
収穫後すぐに(時間がたつと硬くて処理が大変になる!)10~30㎝位に裁断。
1日ほど置くと水分が抜けて軽くなるので、キュウリやトマトの株元や横の通路に敷いて泥はね防止にする。
トウモロコシの葉っぱや茎にはケイ酸が含まれ、天然資材として有効。
夏野菜の栽培中でも、徐々にケイ酸が吸収されて、強くおいしくなる。
根っこの部分はそのまま、畝全体に、微生物資材「カルスNC-R」と「米ぬか」をまいて、畝の中央の土を通路に置いてある、トウモロコシを裁断した残渣の上にかけていく。
または、もみ殻燻炭資材「コーランネオ」を使ってもよい。
有益な微生物が少ない畑では、トウモロコシの残渣がなかなか分解されないので、微生物が多いかどうかの判断にもなる。
微生物資材をかけて土をかけた後、微生物の活動には水が必要なので、晴天が続いている場合は水を上からかけておくと分解が早まる。