ナスの栽培方法、害虫・病気対策!実写真でわかりやすく!

ナスの品種・土作り・植えつけ・肥料・収穫・病気・害虫対策を実写真でわかりやすく解説!

基本情報

ナスの原産地はインドで高温多湿を好み、日本の夏にあった育てやすい野菜。
暖かい環境で苗作りをして、定植後には肥料を切らさないようにすることで、長期間たくさん収穫することができる。
また、更新剪定することで株が若返り、秋ナスの収穫も可能。
種まきから収穫までの日数は、約120日。
ナスの光沢ある果皮の色は、ナスニンと呼ばれるアントシアニン系色素であり、ポリフェノールの一種で、高血圧や動脈硬化を予防する効果が期待できる。

科目 好pH 連作障害 発芽適温 生育適温 発芽日数 発芽光性 日照
ナス科 6.0~6.8 3~4年 25~30℃ 20~30℃ 約10日 嫌光性 陽性

ナス栽培のポイント

  • 収穫期間が長いので、肥料を切らさない
  • ナスは水で作ると言うように、こまめに水やりをする
  • 秋ナスを収穫するには、最盛期に更新剪定を行う

コンパニオンプランツ

一緒に栽培することで互いに良い影響を与え合う植物の組み合わせをコンパニオンプランツという。

 ネギ類

香り成分で害虫を遠ざけ、根に共生する菌がナスの病気を抑える。

ニラ

根を絡ませるように混植することで、ニラの根に繁殖する拮抗筋が「青枯病」などの土壌病害を防ぐ。

パセリ

ナスがパセリに付くキアゲハを遠ざけ、パセリはナスの害虫を遠ざけ、互いに生育を助け合う。
パセリはやや日陰を好み、草丈が低いのでナスの株元に植えると土の乾燥を防ぐ効果もある。
2023年うちのナスの植えつけ。左がナスでニラと混植。真ん中がパセリ。

 

 エダマメ

マメ類全般と相性が良く、エダマメは特に良い。

ラッカセイ

マメ科植物の根に付く根粒菌が空気中の窒素を固定して土壌を肥沃にし、根に付く菌根菌がリン酸分などの養分を吸収しやすくする。

レタス

互いに生育を助け合う。

マリーゴールド

トマト・ナス・ピーマンの病虫害を減らし、生育を助ける。
土中のセンチュウを減らす。

バジル

香り成分がナスの害虫(アブラムシ・ニジュウヤホシテントウ)を遠ざける。
蚊やハエも遠ざける。

シソ

ナスの害虫を遠ざける。

相性が悪い野菜

キュウリなどウリ科全般

土壌中のネコブセンチュウを増やす。

オクラ

土壌中のネコブセンチュウを増やす。

トウモロコシ等の背の高い物

ナスには強い日光が必要なので、背丈が高い野菜を混植すると成長を妨げる。

栽培時期

地域や品種により異なるので参考まで。(さいたま市想定)

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作業内容   種まき~ ~種まき 植えつけ~ ~植えつけ   収穫~         ~収穫

品種

地方ごとに、形や大きさ、色もさまざまな種類がある

長卵形品種

全国で最も生産量が多く、青果店や量販店などで一般的に販売されているタイプ。

千両二号

夏秋用ナスの代表種。環境適応力が高く、幅広い地域・作型で作られている。
果皮がやわらかく、天ぷら、炒め物、煮炊きから漬物まで、調理の幅が広い万能品種。

とげなし千両二号

「千両二号」の長所をそのままに、トゲをなくしたもの。
植物体すべてにトゲがないので手にトゲが刺さることがなく、安心して栽培できる画期的な品種。

長ナス品種

果肉が粗めでやわらかいので、焼ナスなどに最適。

筑陽

果形は首太の太長で、曲がりが少なく、濃黒紫でつやがよく、肉質は長ナスの割にやや緻密で、「千両二号」同様、調理の幅が広い万能品種。

黒陽

太長で肥大がよく低温性に優れているので、早くから収穫するトンネル栽培に適している。

丸~米ナス

一般的に肉質は、果実が丸く短ければ緻密で、長くなればなるほど粗くやわらかくなる。

早生大丸

生ではかたく緻密な肉質だが、加熱するときめの細かい滑らかな肉質になり、ナス田楽や蒸し物に最適。

くろわし

短めの卵形でヘタが鮮やかな緑色。
緻密な肉質で、加熱しても肉崩れがしにくく、オーブン料理や煮込み料理に向く米ナス。
果実は大型で、日本ナスよりつやと日もちがよい。

賀茂茄子

京都を代表する丸いナス。
肉質がしっかりして煮崩れしにくいのが特徴。

大長ナス

庄屋大長

濃黒紫色で曲がりが少なく、果長35~40㎝にもなる。
果実内の種子の入りが少なく、普通ナスにはないやわらかさ。
大きくなってもかたくなりにくく、焼いた場合、ほかのどのナスよりもふっくらとした極上の焼きナスに。

水ナス

甘みのある水分を果肉に豊富に含み、浅漬けやぬか漬けに最適。
果実に水分を含むので、土壌の乾燥が禁物で、やや多めの水分管理が上作のポイント。

みず茄

長卵形で果肉がごくやわらかい。

SL紫水

長めの丸型で皮が薄く歯切れがよい。

黒皮以外のナス

最近では黒皮以外のナスも出回るようになり、緑皮や白皮など、色みの面でも楽しみに。

緑美

緑皮の大長ナスで焼きナスにすると絶品。

下町美人

白皮の大長ナスで炒め物や煮物に最適。

ウチはこのナス!

2022年は「千両二号」「黒曜」「水ナス」。2023年は苗で「千両二号」と種で「久留米長」。

 

種まき・育苗

セルトレイに種をまき、発芽して本葉1枚の頃にポット上げ(4号:12cmサイズ)する。
はじめからポットにまく場合は、3粒ずつ種をまき、本葉が出た頃に間引いて1本立ちにする。
まだ寒い時期の育苗となるため、ビニール温室やヒーターなどの保温・加温機材を使い、生育適温に注意しながら温度管理が必要。
ナスは種をまいてから植え付けまで70〜80日と長期間の育苗が必要で温度管理も欠かせない。
少しの株数しか育てないのであれば、育苗の手間と難易度を考えると、市販の苗を利用するのがオススメ。
市販の苗は9cmポットに入っているものが多いので、12cmポットに移し替えて大きく育てる。
本葉7〜8枚で、一番花が咲き始めたら定植時期です。

畑の準備

定植2週間以上前に苦土石灰3握り(約150g/1㎡)を散布して耕す。
1週間前に堆肥3~4kg/1㎡、元肥は化成肥料(N:P:K=8:8:8)を3握り(約150g/1㎡)、過リン酸石灰を軽く1握り(約30g/1㎡)を施して再度耕す。
元肥は栽培場所全面にまいて耕す「全面施肥」でもいいが、溝を掘って畝の直下に施す「溝施肥(待ち肥)」の方が効果的。
畝の中央に深さ・幅とも30cmほどの溝を掘り、そこに堆肥・元肥を入れ、土を戻し畝を立てる。
ナスは多肥を好むので、肥効が長い期間続く肥料を使うとよい。
同じナス科でも、「トマト」は肥料が多いと枝葉ばかり茂って実がつかない「つるぼけ」になりやすいが、ナスはなりにくい。
畝作りは定植2~3日前に行い、畝幅70㎝の1条植で株間50~60㎝。
黒色ポリマルチをして、十分に地温を確保しておくと定植後、苗の根の伸張がよくなる。

定植

活着の良否がその後の生育に大きな影響を及ぼすので、定植は晴天の午前中に行う。
高温を好むので早植えは避け、5月に入って十分暖かくなってから植えつける。
あらかじめ苗鉢に水をたっぷり含ませてから、植え穴にもあらかじめたっぷりと潅水し、根鉢が畝面より2~3cm高くなるよう浅植えし、茎が弱くて風で折れやすいので、定植と同時に仮支柱を立てて支えてる。
害虫防除のため浸透移行性殺虫剤を株元に1株につき約2gほど散布。

ナスの一番花を摘むかどうか

育て方やナスの草勢によって変わる。
まだまだ株が小さいため、実をつけると体力を奪われ、株の生長が悪くなりそうなときや草勢が弱い場合は、一番花の開花を確認したら、摘み取った方が良い。
生殖生長に傾けさせるため、一番花を摘まないこともあり。
一番花を摘まずに着果させる場合であっても、必ず早めに収穫をして、体力を維持させる。

整枝

一番花が咲いたら、株を充実させるために花の下にある側枝2本を残し、主枝と側枝2本の3本仕立てにする(または主枝と側枝1本の2本仕立て)。
それ以外のわき芽は切り取る。
葉が混み合ってきたら、古くなった葉や枯れた葉はこまめに取り除く。
株の中に光を入れ風通しをよくしてやることで、実付きがよくなり病気の予防にもなる。

一枝一果法(側枝一果法)

芯となる3本(3本仕立て)の枝からは次々とわき芽(側枝)が出て、そこに実がつく。
放任していると果実がつきすぎて樹が弱るので1.2.3.で管理する。

  1. ナスが出来たらその先の葉っぱ2枚を残して摘芯する。
    わき芽は付け根に近いものを残して、他は摘み取る。
  2. そのナスが大きくなって収穫したら、1で残したわき芽(側枝)を伸ばしてナスを着果させる。
  3. 再び1.と同様に摘心とわき芽かきを行い、これを繰り返す。

支柱立て

真ん中に1本、側枝用に2本を斜めに交差させて支柱を立て、主枝・側枝それぞれを支柱に誘引し固定する。

ツリー栽培

支柱を1本立てて、元気の良い枝を4本残し、真ん中の支柱から紐で吊るす。

追肥

ナス栽培では、追肥と水やりは欠かせない。
植え付けから3週間後に1回目の追肥。ボカシ肥や鶏糞を株間にまく。
1回目の追肥以降は、2〜3週間に1度のペースで追肥。
追肥は根の先端(=葉の先端)に施す。
肥料が足りているかどうかは、ナスの花を見て、雄しべと雌しべの長さを見る。
雌しべ(中心に1本だけある白いの)が雄しべ(周りを囲むように複数本ある黄色いの)よりも長くなっていると肥料が足りている
逆に、雌しべが雄しべに埋もれて見えない場合は肥料不足のサインなので、すぐに追肥。

水やり

ナスは水で作ると言われるくらい、果実の生長には多くの水分が必要。
とくに梅雨明け後の高温と乾燥は、ナスにとって好ましくない。
株が成長して果実がついてきた頃からは、特に大量の水が必要となるため、水切れに注意して、十分に水を与える。
敷きワラなどをして地温の上昇とうねの乾きをやわらげるとともに、乾燥したときはうね間に水をたっぷり与える。
うね間潅水は夕方に行い、翌朝には水がうね間にたまっていないようにする。

1〜2番果は早めに収穫

1〜2番果がなる頃はまだ株が十分に育っていないので、早めに収穫して株の充実を図る。
その後のナスの出来がよくなる。

収穫

収穫のタイミングは一般的な長卵形品種なら、長さ12cm〜15cmが目安(開花後20~25日)。
ヘタの上の部分をハサミで切って収穫。
収穫が遅れると、皮が固くなり、中の種も熟して、食味の悪い「ぼけナス」になってしまう。
また、ナスもトマト同様、昼間に光合成で作った養分を、夜間に実に蓄えるので、栄養価を重視するなら早朝に収穫する。
果実は蒸散作用が盛んなので、収穫後できるだけ早く、新聞紙かラップに包み、日陰で保存する。

更新剪定

実付きがひと段落する7月下旬〜8月上旬、枝葉を切り詰めて根を切る「更新剪定」をすることで、美味しい「秋ナス」ができるようになる。
まず、全ての枝(3本)を3分の1から2分の1の長さに切り戻す。(ついている花や実も落とす。)
次に、株元から30〜40cm離れたところにスコップを入れ、土の中の根を切る。
その後たっぷりと追肥・水やりをすれば、また新芽が出てきて、30日〜40日後には秋ナスが収穫できる。
更新剪定は7月中旬~8月上旬までの間に行い(時期が遅くなればなるほど緩く切り戻し)、追肥と潅水を十分施すことで枝を更新させる。

病害や生理障害

うどんこ病

初め、葉表に点々と白色のかび(菌糸)を生じ、後に拡大して円形病斑となる。
多発時には、全身がうどん粉をまぶしたように白くなる。
糸状菌(カビ)による伝染性の病気で、胞子が風によって運ばれて伝染する。
うどんこ病の菌は湿度が低く乾燥気味のときに発生しやすいのが特徴。
高温下では出にくいので梅雨と真夏以外の時期に発生しやすく、特に風通しの悪いところ、日当たりの悪い部位では多発する。
逆に雨が続くようなときには発生が少なくなる。
胞子が風によって運ばれ伝染するため、発病した葉は切り取って早めに処分する。
治療薬には、有機農産物栽培(有機JAS)にも使える殺菌剤「カリグリーン」が効果的。
炭酸水素カリウムを主成分としているので、散布後、副次的にカリ肥料にもなる。
乾燥が続くときは適宜水やりをすることと、日当たりをよくする。
密植を避け、繁茂しすぎたつるや葉は間引いて風通しの良い環境を作る。

青枯病

元気だった株が急にしおれ、青みを残したまま枯れる。
土壌中の細菌が、水を媒介にして根の傷から侵入して発生する。
梅雨明けから夏にかけて、水はけの悪い場所で多い。
病原菌は腐敗した根とともに土中に残り、翌年増殖して再び健全な植物に伝染する。
発病株は、根をなるべく残さないように株ごと抜き取って焼却処分し、使用した支柱などの道具もよく洗って、天日で乾かす。
青枯病に効く薬剤はない。
連作を避け、高畝にするなど水はけの良い畝で育て、窒素肥料をやり過ぎない。
抵抗性のある台木に接いだ接木苗など、抵抗性の品種を選ぶ。
コンパニオンプランツとしてニンニクやネギを一緒に植えることで、ネギ科植物の根に共生する拮抗菌が「青枯病」の病原菌を抑える効果がある。

石ナス

果皮が固くて光沢のないナス。
開花期前後の低温や極端な高温による受精不良が原因で発生することから、温度管理に注意する。
ホルモン処理によって防止する。

つやなしナス

果皮につやがなく、かたいナス。
梅雨明け後の高温乾燥期に多く発生し、開花後15日以後の果実の水分不足で発生する。
十分なかん水を行うことによって防止できる。

害虫

ナスに発生しやすい代表的な害虫

カメムシ

亀のような形をした昆虫が、つぼみや果実を吸汁し、新芽や花が寄生されると縮んだり奇形となって生育が妨げられる。
果実が寄生されると被害を受けた果肉部がスポンジ状になり、そこから腐ってきたり成長が止まり奇形となったりする。
カメムシは移動性があるため、薬剤の散布時期を逃しやすく対処が困難。
幼虫や成虫を見つけたらすぐに駆除することが大切。
強くつかむと悪臭を放つので、ガムテームなど粘着性のものでくっつけて捕る。
農薬(殺虫剤)を使う場合は、「ベニカ水溶剤」などが有効。
また、防虫ネットを被せておくと防ぐことができる。

チャノホコリダニ

果実のヘタの部分が褐色に変色してさめ肌状になり、新芽は固くなって芯止まり(生長が止まる)。
ダニの仲間による吸汁加害で、虫は小さく虫眼鏡などを使わないと見えない。
ハダニは水に弱いので、葉裏に水を吹きかける。水を散布しただけでも密度が下がる。
確実に防除するには薬剤散布が必要。
有機農産物栽培(有機JAS)にも使える「アーリーセーフ」「ベニカマイルドスプレー」など。
他の植物などから風にのって次々とやってくるため、完全に防除することは難しい。
ハダニは水に弱いため、雨の当たる場所で栽培することや、定期的に葉裏に散水することで数を減らすことはできる。

テントウムシダマシ(オオニジュウヤホシテントウ)

益虫のテントウムシと違い、黒い斑点が28個と多いのは害虫のテントウムシダマシ。
葉を食害する。
幼虫・成虫は見つけしだい手で捕まえて駆除。
農薬(殺虫剤)を使う場合は、「ベニカXネクストスプレー」などが有効。
収穫後の植物の残渣は早めに処分し、冬場は越冬場所になる落ち葉の除去など畑の清掃を行う。
また、窒素過多にならないよう、肥料の与えすぎには注意。
裏葉に付いている20〜30粒の塊の卵や幼虫は、見つけたら駆除し他の植物への被害を抑える。

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