ミカンの栽培方法、害虫・病気対策!実写真でわかりやすく!

ミカンの品種・土作り・植えつけ・肥料・収穫・病気・害虫対策を実写真でわかりやすく解説!

基本情報

温州ミカンは、約500年前に現在の鹿児島県長島町鷹ノ巣で、中国から持ち帰ったカンキツのタネから偶発実生として発生した。
それが福岡県や長崎県を中心に九州各地へ広がり、さらに、瀬戸内、近畿、東海地方へと伝わった。

ミカンの実は栄養価が高く、ビタミンCやプロビタミンA、βクリプトキサンチン、食物繊維などが豊富。

科目 好pH 生育適温 日照
ミカン科 pH5.0~6.0 15~18℃ 日なた

栽培時期

地域や品種により異なるので参考まで。(さいたま市想定)

3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
植えつけ~
剪定~
肥料
~植えつけ
~剪定
  肥料 摘果   収穫~ 肥料   ~収穫

品種

ミカン類にはウンシュウミカンのほかに、キシュウミカン(いわゆるコミカン)、ポンカン、クネンボ(九年母)、タチバナ(橘)、コウジ(柑子)などがある。
なお、諸外国にもクレメンテインやタンジェリンなど多数のミカンの仲間がある。

ウンシュウミカン

ウンシュウミカンも2つに分けられる。
早生ウンシュウ/木が小型で、成熟期が早く、実の収穫量も多く、台風、塩害、寒害などに耐える。
貯蔵性はあまりよくないが、木が小型で丈夫なので、家庭果樹用のミカンとして適している。

普通ウンシュウ/早生の収穫後に成熟する品種で、糖分や酸味が強く、風味もよい。
貯蔵性もよく、 春先に食べるミカンのほとんどはこれ。

日南1号:極早生品種で、熟期は9月下旬。早く収穫すれば、毎年よくなる。割と甘みが強い。

由良早生:極早生品種で、熟期は10月上旬、品質がよいことで知られている。

宮川早生:早生品種で、熟期は10月下旬。甘みと酸味のバランスがよい。ポピュラー。

興津早生:早生品種で、‘宮川早生’より着色は1週間くらい早い。果形は扁平で、味はやや濃厚。

田口早生:とっても甘く果汁たっぷり。果重120g収穫11月上旬、糖度13度、興津早生の改良品種。

石地:中生品種で、11月中・下旬に成熟する。浮き皮になりにくく、完熟するまで樹上に置けるため、非常に食味がよい。

青島温州:品質のよい晩生品種。12月に収穫して貯蔵。大果になりやすく、摘果や剪定に工夫が必要。

ポンカン

太田ポンカン
ポンカンのなかでは大果で、品質優良。

カラタチ

家の生け垣などにも利用され、なじみ深い柑橘。
枝には長いトゲがある。
ウンシュウミカンやキンカンの台木として用いられている。
4月頃に白い花が咲き、秋に果実が黄色に色づく。
中国の長江上流原産。

育て方のコツ

温州ミカンを上手に育てるには、庭植えの場合は、日当たりと水はけがよく、風が吹きつけない場所に植える。
夏に乾燥しやすい場合は、ワラなどで株元をマルチングするとよい。

また、実った果実を全て成熟させると、木に負担がかかり、収穫した翌年は果実が着きにくくなる「隔年結果」という現象を引き起こす。
毎年、安定的に同じ大きさの果実を収穫するには、「摘果」の作業が重要。
まず、7月に小さい果実を、1カ所に集まって着果しているところから摘み取る。
8月に仕上げ摘果を行い、温州ミカンでは最終的に葉の数約20~25枚につき1果とする。

土づくり

排水性と保水性を兼ね備えた用土を好む。
小粒の赤玉土と腐葉土を7:3程度で混ぜたものが基本の配合。
市販の果樹用培養土を使うのが手軽でおすすめ。

2月のまだ寒い時期に、直径と深さがともに50cm程度になるよう穴を掘って、堆肥20リットルと苦土石灰を200グラム程度よく混ぜて土づくりをしておく。

植え付け

ミカンの植え付け時期は3月以降の暖かくなってきた頃。

接ぎ木苗を植える場合は、根元の接ぎ木部分が土に埋もれないよう、浅植えにする。

植え付けた後は、苗木の高さの50cm程度までで切り詰め、支柱を添えてさして、ひもで結び留めておく。
最後に土と根が密着するようにたっぷり水を与える。

水やり

苗木を植えつけてすぐは、毎日たっぷり水を与える。

苗木が根付いて生長したら、地植えの場合は自然の雨だけで十分。
ただし、夏場に乾燥が続くようなら適宜水を与える。

成木になったら、春から夏にかけての果実の成長期に水切れさせると、落果や落葉の原因になる。
しかし、成熟期に当たる10月~12月は、土を乾かし気味に管理した方が、果実の色づきが早くなり、甘い果実ができる。

仕立て

ミカンの場合は3本主枝で斜めにメインとなる枝を広げていく形が主流で、最も良い形とされている。
3方向に主枝を伸ばしていくように仕立てていく。

剪定

ミカンは、一度にたくさんの枝を切ってしまうと極端に弱ってしまうので、一年で切る量は全体の3割以下に抑える。

ミカンの木の剪定は2月下旬〜3月ごろ。
4月下旬には新芽が出てくるので、その前に行う。

1年目の剪定:樹高を調節する
苗木を植えた年は、切り戻し剪定を行う。
植えつけてすぐ、地面から40~50cmほどの高さに切る。
細い枝は間引き、太い枝も切り詰める。
樹齢1年目に剪定する目的は、樹高の調節と成長の促進。
上に伸びている幹を切ると、切り口から新しい枝が出てきて横に広がり、樹高が低くなるので、みかんが実った時に収穫しやすくなる。
幹を切り戻さないと木は上に伸び続け、枝も出てこない。

また太い枝を3~4本だけ残した枝は、主枝として育てる。

2~3年目の剪定:花芽の付いていない枝を切り取る
2年目に入ったら、育ちのいい枝以外を剪定する。
太い枝を3〜4本残し、残りの細い枝は根元から切り取る。
残した太い枝も、先端から1/3ほどのところで剪定する。
切るときは、外芽(枝の横や下から出ている芽)の先で切る。

3年目は、2年目の剪定から伸びた枝を剪定する。
残すのは地面に平行に伸びている枝。
上に向かって伸びている枝は切り取る。
伸びすぎた枝も全体のバランスを崩すので、2年目からの剪定は樹形を整えるためにも切り戻しが必要。

4年目以降の剪定:不要な枝を取り除く
4年目以降になると樹形はほぼ完成するため、不要な枝を適宜間引き剪定する。
枯れている枝や、病気や害虫に侵された枝は優先的に切り落とす。
細い枝や上方に伸びた枝、下方に垂れた枝も不要なので剪定する。
みかんの花芽は春に伸びる枝につき、夏や秋に伸びた枝は実がつきにくいため、枝の付け根から切る。

すでに実をつけた枝も次の年は実をつけないので、1/3ほどまで短く切る。

剪定する枝の選び方

徒長枝
他の枝に比べて勢いよく長く伸びた枝。養分を吸い上げる力が強く、よい果実がつかない。
ひこばえ
樹木の根元から生えている枝。

逆さ枝
他の枝とは全く逆の向きに生えている枝。

車枝
車輪の軸のように、幹の一か所から数本の枝が放射状に伸びている枝。

平行枝
近い位置で長さと太さが同じくらいの2本の枝が上下、または左右に平行して伸びている枝。

枯れた枝や虫の付いた枝

枯れた枝を放置していると新しい枝が生えにくくなるだけでなく、枝自体が病害虫の発生源になる。
発見し次第ただちに切り落とす。

すでに害虫や虫の卵が付いた枝は、被害を受けた葉をできるだけ取り除く。
葉を落とすだけでは間に合わないほど多くの虫や卵が付いているなら、付け根から枝全体を切り落とす。

木にすみ着く害虫の多くは、葉の裏に卵を産ので、葉の裏までチェックしておく。

勢いの強い枝や細い枝
勢いよく上に伸びている枝(徒長枝)は、養分を吸い上げる力が他の枝よりも強く、実付きを悪くする原因になる。
反対に下に垂れ下がっている枝は養分を吸い上げる力が弱く、実が付いても小玉の果実が多くなる傾向がある。

手を広げて横に向けたときの指の角度を目安に、不要な枝を見極める。
親指・小指と同じくらいの角度で生えている枝は、養分を吸い上げる力が強すぎる、もしくは弱すぎるため切り落とす。

細く貧弱な枝も日当たりや風通しを悪くするので、病害虫の被害を防ぐために剪定したい枝。
角度が適切でない枝や太さの足りない枝を間引くことで、実を付ける枝に十分な栄養が行き渡る。

前年の春に実を付けた枝
みかんの木は実を付けた枝に翌年も実を付けることはない。
みかんは実を付けている間、翌年に実になる花芽の形成を行う。

枝に付く果実が成長し始めると、養分不足や植物ホルモンの関係で翌年に出る花芽の形成が抑制され、実を付けた年の翌年は、実付きが悪くなる。

なので、前年に実を付けた枝は、1/3程度を残して切り落とす。

また前の年の秋に伸びた枝には、春枝・夏枝と比べて実付きがよくない。
秋枝は根元から切り落とす方がよい。

肥料

カンキツ類の施肥は、基本的には年2回。
元肥として2月から3月に施し、追肥として9月から10月に油かすや緩効性化成肥料を施す。
2年生以下の苗であれば、元肥として粒状肥料「マイガーデンベジフル」を1株あたり200g程度施し、さらに追肥として100g程度を施す。
施肥量は、成木になるにつれて徐々にふやす。
また、樹勢が弱っている時は、液体肥料が効果的。
液体肥料「マイガーデン液体肥料」、「花工場原液」を250倍に薄めたものや「ベジフル液肥」を1000倍に薄めたものを、株全体にかけて施す。

目安:元肥・・・3月、実肥・・・6月、お礼肥・・・10月?の3回説もあり

摘果

ミカンは、表年と裏年を交互に繰り返す“隔年結果”という状態に陥りやすい果樹。
これを防ぐためにも、追肥の施与、そしてこの摘果作業は大変重要。
他の果樹と違い大きく育てた方がおいしい果実になるというわけではないので、家庭果樹の場合は自然落果が落ち着く7月上中旬頃におこなう。
果実1つにつき葉が20枚くらいのバランスが最も適正な状態。
傷がついているもの、奇形果、小さい果実を優先して外す。
また、真上を向いている果実や果柄の極端に太い果実は品質が悪くなりやすいので落とす。

収穫

ミカンは品種によって早生(わせ)温州の場合は10月中旬から、普通温州の場合は11月中旬頃から収穫を開始。

温州ミカンは早生種から中生種まで、品種によって成熟時期が異なりますが、いずれもオレンジ色にしっかりと色づいてから収穫。
特に、早生品種の中には、果皮が緑色でも甘みがでる品種もあるが、基本的には樹上でしっかりと成熟させた方が甘みが出る。
果実だけをハサミを使って収穫する。

病害虫

そうか病、かいよう病、灰色かび病、黒点病
6月の殺菌剤、台風前の殺菌剤散布で予防する。

アブラムシ類

予防:特定防除資材の「酢」が原料の製品を散布する。
駆除:数が少ない場合は、セロハンテープなどを利用。
多く発生している場合は、薬剤を使用。

カイガラムシ

予防:風通しをよくする。古い木は剪定する。
駆除:殻などで覆われているため駆除が難しい。
ブラシ等で葉や茎を傷めないようにこすり落とす。

ハダニ

予防:特定防除資材の「酢」が原料の製品を散布する。
駆除:水で流すことが可能。葉の裏側まで洗い流すように勢いよく水をかける。

障害

ミカンの葉が黄色く変色しているケースのほとんどが以下の原因。

  1. 肥料(窒素)不足…単純な肥料不足。
    施肥をしていない場合や、真夏の乾燥などで吸えていないケースが多い。
    施肥と真夏の水やりを心がける。
  2. 苦土欠乏…葉脈は緑色だけれど、まだらに黄色くなっている場合、マグネシウム(苦土)欠乏であるケースが多い。
    ミカンではよく起こる。
    冬季に苦土石灰を毎年与えることと、夏の間もマグネシウムが入った肥料を与えた方が元気になり、食味も良くなる。
  3. 夏秋梢(かしゅうしょう)…ミカンは栽培カレンダーにある通り、春に伸びる枝と、夏に伸びる枝と、秋に伸びる枝の3種類の枝がある。
    最も生産性が高いのが春枝で、春枝が多いほど木の状態が良くなる。
    夏秋梢は、放置しているとほとんどがエカキムシという害虫に食害され、黄色くなってしまう。
    そもそも生産性の低い枝なので、家庭果樹においては放置しておいても大勢に影響はありません。
    見た目が気になる場合は切除して大丈夫。
  4. 凍害…冬の寒さでやられるケース。
    この場合はやがて葉が散ってしまい、木は大きなダメージを受けてしまう。
    その年はできるだけ果実をならさず、樹勢回復に努める。
  5. ダニ…ダニによる食害。
    目で見えにくいため、家庭果樹では夏以降に大量発生しているケースが多い。
    葉を触ってみて手に汚れがついたらダニの存在を疑ってみる。
    殺ダニ剤やマシン油を散布。

温州みかん
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